偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
――手、つなぎたい。
以前の私なら、こんなことを思っただろうか。
触れられることが嫌だった時期もあった。
理玖に勝手に距離を詰められるたび、嫌だと言っているのにどうしてわかってくれないんだろうと思っていた。
でも今は違う。
慧さんは、私が望まない限り絶対に踏み込んでこない。
あの夜だってそうだった。だからなのかもしれない。
今度は私のほうから、この人に触れたいと思う。
ちらりと隣を見上げると、慧さんもこちらを見ていた。
視線が絡む。
「あの……」
「あのさ」
ほとんど同時に声が重なり、二人とも言葉を止めた。
なんとなく。本当になんとなくだけれど、同じことを言おうとしたような気がした。
だったら、もういいか。
考えるより先に、私は少しだけ大胆になっていた。