偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

 すぐそばにあった慧さんの手へ自分の手を伸ばし、そのまま指を絡めるように握る。
 慧さんの目が、わずかに見開かれた。

「悠里?」
「……だめですか?」
「まさか」

 すぐに返ってきた言葉と一緒に、今度は慧さんのほうから強く握り返される。
 それだけで胸がいっぱいになった。

 手をつないだだけなのに、さっきまでよりずっと近くにいるような気がする。

 向かい合うように身体を動かすと、また視線が絡んだ。
 今度はどちらも逸らさなかった。

 慧さんの顔が、ゆっくり近づいてくる。

 ――キスだ。

 そう気づいたときには、逃げたいとは少しも思わなかった。
 むしろ……私は自然と目を閉じていた。
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