偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「俺たち、本当の恋人になれないか」
「……え?」
「もちろん、結婚を前提として」
意味が分からず、それが自分に向けられたものだと理解するまでに、頭の中で何度も同じ言葉を繰り返さなければならなかった。
――本当の恋人? 結婚を前提として? 私と、慧さんが?
胸の鼓動がますます速くなって、何か答えなければと思うのに、口を開いても声が出てこない。
そんな私を見て、慧さんの表情にわずかな不安が浮かんだ。
「それとも、悠里は早くこの関係を終わらせたい?」
「まさか! それは絶対嫌です!」
考えるより先に声が出た。
デッキに響くほどの勢いで言い切ってから、私は自分が何を口にしたのかに気づいた。
けれど、もう遅い。
慧さんは一瞬目を見開き、それから安心したようにゆっくり目を細めた。
「……そうか」