偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

「俺たち、本当の恋人になれないか」
「……え?」
「もちろん、結婚を前提として」

 意味が分からず、それが自分に向けられたものだと理解するまでに、頭の中で何度も同じ言葉を繰り返さなければならなかった。

 ――本当の恋人? 結婚を前提として? 私と、慧さんが?

 胸の鼓動がますます速くなって、何か答えなければと思うのに、口を開いても声が出てこない。
 そんな私を見て、慧さんの表情にわずかな不安が浮かんだ。

「それとも、悠里は早くこの関係を終わらせたい?」
「まさか! それは絶対嫌です!」

 考えるより先に声が出た。
 デッキに響くほどの勢いで言い切ってから、私は自分が何を口にしたのかに気づいた。

 けれど、もう遅い。
 慧さんは一瞬目を見開き、それから安心したようにゆっくり目を細めた。

「……そうか」
< 118 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop