偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「ごめんね、大したことなかったのに電話して」
「いや、電話してくれてよかった。こういうのは大丈夫でもすぐ言えって前にも言っただろ」
「はいはい」
翠くんは軽く返してから、少し意味ありげに慧さんを見る。
「ついでだから、ちゃんと会っていきなよ。この前、喧嘩したきりなんでしょ?」
「喧嘩ってほどじゃない」
「いや、あれは普通に喧嘩でしょ。慧兄はお見合いしないって頑なで、父さんもお見合いしろって頑なでさ……」
その言葉に、私は思わず慧さんを見る。
そういえば、前にそんな話を聞いたことがある。
家から見合いを勧められているけれど、その気はないと。
「慧兄が理由をちゃんと言わないで断り続けてるから余計に揉めるんだよ。単純に、好きな人と付き合ってるから、お見合いしないって言えばいいのに」
……好きな人。
その言葉に、胸が小さく跳ねた。
「言うつもりだったよ」
慧さんが淡々と返す。
「なら、ちょうどいいじゃん」
「だから、連れて来たんだ」
「……え?」
思わず慧さんを見る。