偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「俺はもともと、結婚どころか恋愛自体する気がなかったんだ。両親が一番揉めてる時期を間近で見てたっていうのもあるし、家のことを知って近づいてくる女性も昔から結構いたからね。かなり強引なのもいたし」
「押し倒されたんですっけ?」
「……そこだけはよく覚えてるな」
「忘れられるわけないじゃないですか」
「頼むから忘れてくれ。別に俺だって好きで押し倒されたわけじゃない」
慧さんが苦笑するので、私も思わず笑ってしまった。
少し重くなっていた空気がそこで一度緩んだけれど、慧さんはすぐに表情を戻し、言葉を続けた。
「とにかく、そういうこともあって、恋愛なんて面倒なだけだと思ってた。でも悠里と仕事をするようになってから、少しずつ変わったんだよ。好きだと自覚した頃には、悠里は相沢さんと付き合ってた」
「……待ってください」
私は思わず手を上げた。