偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
待って。ちょっと待って。
私は五か月前のことを、頭の中でもう一度思い返した。
「そういえば……最初に『半年くらい続けたほうがいい』って言ったの、慧さんですよね」
「そうだね」
「すぐに終わったら相沢さんに怪しまれるからって」
「それも本当。数週間で破談になったら、さすがに不自然だろ?」
「じゃあ、半年っていうのは?」
「半年くらいあれば、悠里にも俺を上司じゃなく、一人の男として見てもらえる可能性があるかなと思って」
「…………」
言葉が出なかった。
なんだろう。今まで純粋に親切だと思っていたもののいくつかが、一気に別の意味を帯び始めている。
連絡先を交換したことも。定期的にランチへ誘われるようになったことも。
車で送ってもらったことも。二人のときだけ悠里と呼ばれるようになったことも。
私はそのたびに『婚約者のふりをしているから』『慧さんは面倒見のいい上司だから』と納得してきたけれど、もしかして慧さんの中では少し違っていたのだろうか。