偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「笑い事じゃないですよ。私、本当にずっと、慧さんは親切で婚約者のふりを続けてくれてるんだと思ってたんですから!」
「親切だったのは否定しないよ。ただ、俺にもかなり下心があっただけの話だ」
「自分で下心って言います?」
「今さら格好つけても仕方ないだろ。好きな女性と恋人のふりをして、しかも本人が嫌がってない。だったら、できればそのまま本物になりたいと思うのは普通じゃないか?」
「普通……なんですかね」
「少なくとも俺には普通だった」
悪びれもせず言い切られてしまい、私はますます何も言えなくなる。
それでも、不思議と嫌な感じはしなかった。
たぶん、この五か月を思い返しても、慧さんが私の意思を無視して何かを押しつけてきたことは一度もなかったからだ。
むしろ、距離を詰めるときほど慎重だった。
触れようともしなかったし、あの夜に家へ泊まったときでさえ必要以上に近づかなかった。今日だって、最初に手を握ったのは私のほうだった。