偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

「来週、出張なんだっけ? どこに行くの?」
「大阪。二泊してくるよ」
「誰と? 男も一緒?」
「仕事なんだから男性社員だっているけど、それがどうかした?」

「別に疑ってるわけじゃないけど、心配するだろ。そうだ、位置情報を共有しない? 何かあったときにも、そのほうが安心だし」
「え……あ、位置情報?」

「何か後ろ暗いことがあるから、嫌ってこと?」
「後ろ暗いとかじゃなくて、なんとなくそこまではって……」

「カップルの位置情報共有なんて今時普通だよ。いいじゃん。それに俺が安心だからさ」

 最初のうちは、心配してくれているのだと思った。

 けれど、会えばその日に誰と話したのか、相手は男なのか女なのか、どんな話をしたのかと細かく聞かれるようになった。
 あまりに細かいので面倒で答えたくないと言えば「恋人なのに隠すことがあるのか」と機嫌を悪くされるし、友人と出かけていて連絡が遅くなれば何件もメッセージが届くようになった。

 私は次第に理玖の機嫌を損ねないために自分の行動を説明するようになっていた。

 それでも、私は誰かと付き合うこと自体が理玖との交際が初めてだったから、恋人同士とは多少窮屈なものなのかもしれないと自分を納得させた。
 これも私を好きだからなのだろう、恋愛経験の多い理玖の恋愛が普通なのだろうと、自分の中に生まれた小さな違和感を何度も飲み込んだ。

 でも、私が一番嫌だったのは、理玖が私の意思とは関係なく当たり前のように身体へ触れてくることだった。
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