偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「なんで笑うんですか!」
「いや。『別の部屋はナシです』って言ってた人と同一人物とは思えなくて」
「そんなことばかり言って! もう帰りますよ!」
「ごめんごめん。じゃあ、お先にどうぞ」
完全に遊ばれている。
私は逃げるように浴室へ向かい、扉を閉めてから大きく息を吐いた。
自分から誘っておいて、この体たらくだ。
でも……後悔しているわけではなかった。
慧さんがずっと前から私を好きだったこと。
私に恋人がいるあいだは何もせず、別れてからも急がずに待ってくれていたこと。
そして、偽の婚約者になったときから、いつか本物になれればいいと思っていたこと。
それを知ったら、今日は離れたくないと思った。
今までの五か月を、私だけが大切に思っていたわけではなかったのだとわかったことが、どうしようもなく嬉しかった。