偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

 目の前まで来た慧さんが、私の顔を覗き込む。

「父さんの件もそうだけど、悠里って勢いで思い切ったことを言って、あとから後悔するタイプだな。仕事ではあまりそういうところ見せないけど、プライベートだと結構わかりやすい」
「……それは否定できませんけど。でも、後悔してるわけじゃないです。ただ……恥ずかしくなるだけの話で」

「今日泊まるって言ったことも?」
「それも……後悔はしてませんよ」

「別の部屋はナシって言ったことも?」
「……してません」
「へえ」

 明らかに楽しんでいる。

 私は恥ずかしさをごまかすように睨んだけれど、慧さんはまったく怯まず、それどころか私との距離を縮めた。

「じゃあ、もうひとつ確認していい?」
「……なんですか」

「俺と寝ても、後悔しない?」

 その聞き方がずるいと思った。

 散々からかっておきながら、最後のところだけは私に決めさせる。
 いつもそうだ。

 策士で、意地悪で、自分に都合のいい機会は絶対に逃さないくせに、本当に大事なところでは勝手に踏み込んでこない。
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