偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
だから私は、答える代わりに一歩近づいた。
慧さんの胸に触れ、そのまま両腕を背中へ回す。
「……これでわかります?」
一瞬、慧さんの目が見開かれた。
今日二度目だ。
それだけで少し嬉しくなったのに、次の瞬間には腰に腕が回り、強く抱き寄せられていた。
「ほんと、そういうところだよ」
「……なんですか」
「散々迷って、恥ずかしがって、それでも最後は自分から飛び込んでくる」
すぐ近くで、慧さんが笑う。
「もう……可愛すぎる」
「またそうやってからかって――」
言い終える前に、唇を塞がれた。
「ん……」
船の上でしたキスよりも、ずっと濃い。
背中に回した腕へ無意識に力を込めると、それに応えるように抱きしめる腕も強くなる。
唇が離れたと思ったら、慧さんはすぐには身体を離さず、額を私の額へ軽く触れさせた。