偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

 ただ、悠里は自分は人に頼られるくせに、自分は頼ろうとしない部分があった。
 もしかしたら、俺と悠里は少し似ているのかもしれない。そんなことを思っていた。

 しかし、その時点ではやはりただの部下だった。

 たぶん、気になり始めたのは、仕事以外の悠里を知ってからだ。

 一度、相沢さんと一緒にいるところを偶然見かけたことがあった。
 二人が付き合っていたことは、その時はじめて知った。

 相沢さんが何かを言いながら悠里の肩へ手を回そうとして、悠里がその手を避けた。

「それ、嫌だからやめて」

 そう、はっきり言っていた。
 相沢さんは笑って何か返していたけれど、悠里は曖昧に笑って済ませなかった。

 嫌だから、やめてほしい。

 少し大変な仕事でもそんなことを言うことがなかったから、意外だった。
 プライベートの彼女は、仕事とは違うのだろう。

 はっきりと断ることもあるんだな、となぜかその光景が記憶に残った。
< 164 / 188 >

この作品をシェア

pagetop