偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
最終章 これからもずっと
ぱちりと目を覚ますと、すぐ目の前に慧さんの顔があった。
あまりにも近くて、一瞬、まだ夢の中にいるのかと思う。
けれど、私を見つめる目がゆっくりと細められて、見慣れたはずの整った顔に、仕事中には絶対に見せないような柔らかな笑みが広がる。
「おはよう、悠里」
「おはよう……ございます」
昨夜の記憶が一気に蘇ってきて、まともに顔を合わせていられなくなった。
思わず視線を下げると、今度は自分が慧さんの腕の中にすっぽり収まっていることを意識してしまって、余計に恥ずかしくなる。
「なんで顔、見てくれないの」
「慧さんこそ、朝からそんなに見ないでください」
「無理だな。昨日言っただろ、全部見たいからさ」
あまりにもさらりと言われて、ますます顔を上げられなくなる。
昨夜、慧さんは十分ずるかった。
今まで見たことがないくらいの甘い瞳と言葉、そして気持ち良さで私を翻弄し続けた。
そのうえ朝になってまで、こんなことを言うなんて聞いていない。