偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

「……っていうか、慧さん、いつ起きたんですか?」
「ん? さっきだよ」
「本当に?」
「どうして?」

「……なんか、ずっと見られてた気がするから」

 一瞬、慧さんが黙った。
 それから、ほんの少しだけ目を逸らす。

「……まあ、少し前、かな」
「少しってどれくらいですか?」
「せっかく好きな人が隣で寝てるんだから、見てたっていいじゃないか」

 また、そういうことを言う。
 抗議するように見上げると、慧さんは楽しそうに笑って、そのまま私の額にそっと口づけた。

 触れるだけの短いキスなのに、胸の奥が温かくなって、文句を言おうとしていた気持ちまでどこかへ消えてしまう。

 初めて迎える二人の朝は、なんだかひどくくすぐったい。

 目が合うだけで恥ずかしくて、それ以上に、どうしようもなく幸せだった。

 昨日までだって、何度も会っていた。
 一緒に食事をしたし、車で送ってもらったこともある。慧さんの家に泊まったことだってある。でも普通に離れられた。

 それなのに今は、ほんの少し離れることさえ惜しい。

 これまで私は、どうやってこの人と離れていられたんだろう。
 そんなことを本気で不思議に思ってしまう。
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