偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「……今日も、一緒にいてもいいですか?」
考えるより先に、言葉が口からこぼれた。
慧さんが少し目を見開く。
また勢いで言ってしまった、と気づいたときには遅かった。
「いや、その……昨日いろいろありましたし、お父さまのことも気になりますし、別に一日中ここにいるって意味じゃなくて――」
「もちろんいいよ」
遮るように言って、慧さんが嬉しそうに破顔する。
その笑顔を見た途端、言い訳を重ねようとしていた口が止まった。
「今日だけじゃなくて、ずっとここにいてくれてもいいんだけどな」
慧さんの冗談ともわからぬ呟きに、心臓が大きく跳ねた。
私だって、さっきから同じようなことを考えていた。
ずっと一緒にいられたらいい。
朝起きたら慧さんがいて、仕事が終わったらここへ帰ってきて、一緒にご飯を食べたり、ビールを飲んだりして、どうでもいい話をしながら一日を終える。
そんな毎日を想像したら、驚くほど自然に思えた。
でも、それを口にするのは少し怖かった。
付き合うと決めたのは昨日で、それなのにもうずっと一緒にいたいなんて、いくらなんでも急ぎすぎている気がする。私の気持ちばかりを押しつけるみたいで言えない。