偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
 そして、私たちはというと――。

 まだ婚姻届は出していない。ただし、一緒に暮らしていた。

 正式に私が引っ越す前には、私の両親にも話すことにした。
 慧さんは、「一緒に暮らすなら、ちゃんと挨拶に行かないと」と言い出し、本当に私の実家までやって来たのだ。
 そのときの両親と兄の反応については――今思い出してもはしゃぎすぎていて頭が痛くなるので、ここでは端折る。
 ただ、最終的には認めてもらえた。

 結婚についても、もちろん話している。
 というより、慧さんはすぐにでもするつもりだったらしい。

 でも今は、私がL'ÉCRINの正式な担当になったばかりで、そのうえ『久世部長』が抜けた穴も大きい。
 もう少し、この仕事を自分の力でやってみたかった。

「だから結婚はもう少しだけ待っていてください」

 そう話すと、慧さんは少しだけ残念そうな顔をしたものの、すぐに頷いてくれた。

「じゃあ、待つよ。俺も今は悠里が近くにいてくれたらそれでいい」
「ありがとうございます」
「ただし、延期であって中止じゃないからな」

 そんなことを言っていながらも、待ってくれることが嬉しかった。

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