偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「それで、悠里。ひとつ、渡したいものがあるんだけど」
「なんですか?」
慧さんはそう言うと、不意にソファから立ち上がった。
何をするのだろうと思って見上げていると、私の前でゆっくりと片膝をつく。
「……え?」
その姿を見た瞬間、胸が大きく跳ねた。
まさか。そう思ったときには、慧さんがポケットから小さなケースを取り出していた。
「結婚は少し待ってほしいって言われたから、それは待つよ。悠里が今、仕事を頑張りたいと思ってることもわかってるし、俺も本社でやることがある。だから、今すぐ婚姻届を出そうとは言わない」
そこで一度言葉を切ると、慧さんは私を見上げ、少しだけ笑った。
「でも、約束くらいはしておきたいんだ」