偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
その時、三原さんは席を立った。
「じゃあ、私、これからデートなんで失礼します! もしよければ、彼氏の友達との合コン頼んでおきましょうか!」
「いや、お気持ちだけでいいから……。ありがとう。楽しんできてね」
「はーい! 出会いに関してはいつでも言ってくださいね!」
恋愛方面ではかなり頼りになりそうな後輩の後ろ姿を見送り、私はパソコンに目を移した。
そして三十分程度で報告書を仕上げて送信する。来ていたメールに返信していたら帰社してから1時間程度になっていた。
私も疲れた。今日はもう帰ろう。
そう決めて、伏せていたスマートフォンを手に取ると、ちょうどまた理玖からメッセージが届いて画面が明るくなった。
そこに表示された『今日、今から会えない?』という文字を見ただけで気持ちが重くなる。
もしかしたら三原さんの言うとおり、私に新しい恋人がいないから、理玖はまだ自分にも可能性があると思っているのだろうか。
恋人がいないから復縁できる。
誰のものでもないのだから、まだ自分のものに戻せる。
そう考えれば、別れてから二か月も経つというのに理玖が諦めないことにも、妙に納得がいく気がした。
――だったら、新しい彼氏がいると言えば諦める?
そんな考えがふと頭をよぎったものの、いくらなんでも嘘までつく必要はないだろうと、このときの私はすぐに打ち消し、スマホのメッセージは未読にしたまま私は席を立った。