偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「誰? 付き合ってるって、別れて三か月でもう別の男から告白されたってこと? そんなすぐ乗り換えて、向こうだって悠里のこと軽い女だと思ってるんじゃないの」
「違う。……プロポーズされたの」
「は? プロポーズ?」
「そう。私、その人と結婚するの」
自分の口から飛び出したとんでもない嘘に、私自身も内心でぎょっとしていた。
でも、私を見下すような理玖の言葉に腹が立ったのも事実だし、恋人ができた程度ではこの人は諦めないだろうという確信もあって、ここまで来たら引き返せないと腹を括る。
「別れてまだ三か月だろ。そんな短期間でプロポーズなんかされるわけないだろ」
「三か月だから何? 時間なんて関係ないでしょ。私はその人の気持ちに応えたいって思ったから頷いたの。それに私たち、もうすごくラブラブなんだから! ちゃんと結婚するの!」
「嘘つけよ。そんな男がいるなら、なんで今まで一度も話に出なかったんだよ」
「本当だってば!」
勢いだけで押し切ろうとした私の腕を理玖が突然掴む。
指に力を込められた感触に、ぞくりと背中を冷たいものが走った。
「だったら、その婚約者ってやつを俺に会わせろよ。本当にいるなら、それくらいできるだろ」
「それは……」
「ほら、やっぱり嘘じゃん。悠里、いい加減くだらない意地張るのやめろよ」
「だから、離して――」
「彼女から手を離してもらえますか」
背後から聞き慣れた低い声。
理玖の指からわずかに力が抜け、私も弾かれたように振り返る。