偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「どうした? 俺の顔に何かついてるか?」
「いえ、そうじゃなくて……部長って、こうしてプライベートな感じで話してると、ちょっと年相応というか、会社で仕事してるときと印象が違うなと思って」
「なんだ、俺は普段そんなに老けて見えてるのか」
「いや、そうじゃないんですけど。いつも落ち着いてるし、今みたいに声を出して笑うところもあまり見ないから、なんとなくもっと上に見えるというか……あ、老けてるって意味じゃないですよ?」
「わかってるよ。ただでさえ、部長陣の中では俺が一番若いからな。あまりへらへらもしてられないっていうのもあって、俺も会社ではできるだけ気を引き締めてるんだ。それもあるかもしれないな」
「そうですよね……三十一歳で部長ですもんね。私だったら、周りの目が気になって仕方ないかもしれません」
やっぱり会社で接しているときとは少し違う。
今まで仕事のできる上司としてしか見ていなかった人にも当然こういう顔があるのだと、私は少し不思議な気持ちになっていた。