偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
翌日の土曜日、地元から両親が東京へやってきた。
私の部屋に三人で泊まるにはさすがに狭いため、両親の宿泊先として前々から予約していたのは、私が担当しているホテル『グランシエル東京』。
L’ÉCRINほどのラグジュアリークラスではないものの、うちの会社が国内で展開するホテルブランドの中では上位に位置している。
普通のツインルームでも客室はゆったりとした造りで、バスとトイレは別、カーテンやカーペットも落ち着いた色合いで統一されている。
それになにより大きな窓から眺める東京の景色がいい。
「まあ、すごい部屋ねぇ。窓からの景色もきれいだし、こんなところに泊まっていいの?」
「いいの、いいの。せっかく東京まで来たんだから。それに私も仕事で関わってるホテルだしね」
「悠里もすごいところで働いてるのねぇ。こんなホテルで毎日働いてるなんて、お母さんには想像もつかないわ」
「いや、ホテルで働いてるわけじゃないんだよ。入社したときの研修はここだったけど、今は本社勤務だから」
部屋の中を見て回りながら嬉しそうにしている両親を見て、せっかく来てもらうのだから喜んでほしいと思っていた私はほっとした。
窓際から景色を眺めていた母がこちらを振り返った途端、その表情が妙に意味ありげなものへ変わった。
「仕事も順調そうだし、これで結婚もしてくれたら、お母さんたちはもっと安心できるんだけどねぇ」
「う……。出た、その話」
「だって心配にもなるわよ。私たちは二十六で結婚してたし、悠里くらいの年にはもう海里もいたんだから」
「時代が違うでしょ。今は二十八で結婚してない人なんて珍しくないから」
兄の海里はすでに地元で結婚して子どももいるため、両親からすれば、東京へ出て仕事ばかりしているうえに結婚の気配すらない娘が心配なのだろう。
だけど、だからといって顔を合わせるたびにこの話をされるこちらとしてはたまったものではない。
私の部屋に三人で泊まるにはさすがに狭いため、両親の宿泊先として前々から予約していたのは、私が担当しているホテル『グランシエル東京』。
L’ÉCRINほどのラグジュアリークラスではないものの、うちの会社が国内で展開するホテルブランドの中では上位に位置している。
普通のツインルームでも客室はゆったりとした造りで、バスとトイレは別、カーテンやカーペットも落ち着いた色合いで統一されている。
それになにより大きな窓から眺める東京の景色がいい。
「まあ、すごい部屋ねぇ。窓からの景色もきれいだし、こんなところに泊まっていいの?」
「いいの、いいの。せっかく東京まで来たんだから。それに私も仕事で関わってるホテルだしね」
「悠里もすごいところで働いてるのねぇ。こんなホテルで毎日働いてるなんて、お母さんには想像もつかないわ」
「いや、ホテルで働いてるわけじゃないんだよ。入社したときの研修はここだったけど、今は本社勤務だから」
部屋の中を見て回りながら嬉しそうにしている両親を見て、せっかく来てもらうのだから喜んでほしいと思っていた私はほっとした。
窓際から景色を眺めていた母がこちらを振り返った途端、その表情が妙に意味ありげなものへ変わった。
「仕事も順調そうだし、これで結婚もしてくれたら、お母さんたちはもっと安心できるんだけどねぇ」
「う……。出た、その話」
「だって心配にもなるわよ。私たちは二十六で結婚してたし、悠里くらいの年にはもう海里もいたんだから」
「時代が違うでしょ。今は二十八で結婚してない人なんて珍しくないから」
兄の海里はすでに地元で結婚して子どももいるため、両親からすれば、東京へ出て仕事ばかりしているうえに結婚の気配すらない娘が心配なのだろう。
だけど、だからといって顔を合わせるたびにこの話をされるこちらとしてはたまったものではない。