偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

 ぞわっと右腕から寒気が走り、さっきまで楽しみにしていたビールのことなど一瞬で頭から消えた。

「理玖……え、なんでここにいるの……?」
「二人きりで話したかったんだよ。あいつのいないところで、ちゃんと悠里と話したくて」

「あいつって……もしかして部長のこと?」
「そうだ。久世は悠里の上司だろう。だから俺、あれから考えてたんだよ。悠里は上司だからはっきり断れなかったんじゃないかって」

「な、なに? どういうこと?」

「久世に言い寄られたんじゃないのか。上司から付き合えって言われたら、悠里は断れないだろ。それでそのまま婚約することになったんじゃないのか?」
「ちょっと待ってよ! そんなはずないでしょう!」

 あまりにも突拍子もない話に思わず声を上げたものの、すぐに夜のマンションだということを思い出し、近所迷惑になってはいけないと慌てて声を落とした。

 それよりも、もっと気になることがある。
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