偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
自分から飛びつき、私はまだ久世部長のシャツを掴んだまま。
それでも彼はそんな私を無理に抱きしめることも、頭を撫でることもせず、「そうか。でも、無事でよかった」と静かに言って、背中を二度だけ軽く叩いた。
たったそれだけだった。
なのに、理玖から触れられることが怖くて仕方なかったはずの私は、その手を少しも嫌だとは思わなかった。
それどころか、久世部長のそばにいればもう大丈夫だと、心の底からほっとしていたのだ。