偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
 温かいシャワーを浴びると、冷えていた身体が少しずつ緩んでいく。
 髪を洗うと、ふわりと爽やかなシャンプーの香りが立った。

 ――あ、この匂い。部長と同じだ。

 そこでやけに現実に引き戻される。
 なぜか急に恥ずかしくなり、熱いシャワーのせいだけではない熱が頬に集まってくる。

 別に誰とも付き合った経験がないわけでもないのに、男性と同じシャンプーを使ったくらいで何を意識しているのだろう。

 久世部長は、近くて遠い不思議な距離感だからかもしれない。

 偽の婚約者になってもらってからというもの、一緒にランチをして、困った時には助けてもらって……今はこうして彼の家でシャワーを浴びている。本当の恋人より恋人らしいふるまいをされる。

 ひとつひとつ思い返していくと、本当はずっと前から付き合っていたんじゃないかと錯覚しそうになる。

 なのに、今一つ彼自身や彼の本心は掴めないままだ。

 そんなチグハグさのせいか、気になって、意識してしまうのかもしれない。
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