偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「まだ、慧さんと比べられてる感じはありますけどね」
「気にするな。俺と同じやり方をする必要はない」
「そうなんですけど……。やっぱり『久世さんなら』って言われると、ちょっとへこみます」
「南野さん、そんなこと言ってるのか?」
「言いますよ。普通に」
私が唇を尖らせると、慧さんは困ったように笑った。
「悪い。こちらからも何か言っておこうか?」
「だめですよ!」
「なんで?」
「そんなことしたら、私が慧さんに泣きついたみたいじゃないですか。そういうの、絶対に南野さん嫌うんで、だめです」
思わず身を乗り出して止めると、慧さんは一瞬驚いたあと、楽しそうに笑った。
「わかった、わかった。何も言わない」
「お願いします。これは私が自分でなんとかします」
「あぁ、そうだな」
あっさり引いてくれたことにほっとしながら、私も小さく笑った。
難しい相手なのは間違いないけれど、だからといって嫌な人というわけではない。
こちらがきちんと根拠を示せば話は聞いてくれるし、納得した部分についてははっきり評価もしてくれる。
ただ慧さんから私に変わったことが気に入らないというだけでもなさそうだった。
簡単に認めてもらえるはずがないことくらい、最初からわかっている。
だったら、私なりのやり方で認めてもらえばいい。
「でも、大丈夫です。まだ時間はかかりそうですけど、仕事の話はきちんとできていますし、少しずつですけど、前より話を聞いてもらえるようにもなってきました」
「そうか」
「はい。だから、そこは心配しないでください」
そう答えると、慧さんは少し嬉しそうに頷いた。