arch
私の自宅マンションのベランダからは河川敷が見える。
 そんなに広いベランダではないけれど風の気持ち良い季節なんかは時々外を眺めたりする。この日は少し……風に当たりたい気分だった。なぜかというと、ゆっくりと今日の出来事を整理したかった。

 彼の……髪、背中、腕……
 それから、振り返った彼の目を思い出して顔に熱が集まった。顔が熱い……。ベランダの風が頬を冷やしてくれるのを待って、河川敷へと目を移す。

 水面(みなも)がキラキラと夕陽を映してる。ランニングやウォーキング、犬の散歩をしている人がチラホラ。河川敷には一部赤茶色と緑に塗装されていてバスケットゴールが設置されている。1つだけなのでゲームが出来る本格的なものではない。小学生や中学生の頃は家のベランダから見える事に安心して、よく練習に使っていた。バスケから離れても、不思議とあのゴールを見るとボールを投げたくなる。

そのまま見ていると、ベンチから誰かが立ち上がり数回ドリブルするとシュッとボールをゴールへと向かってシュートする。ボールは綺麗な弧を描き、ここからでもわかる。ゴールへの軌道。パスッと心地よい音が微かに聞こえ、ネットが揺れる。

 わ、ナイスシュート!

 その人は拾ったボールを器用に指先でくるくる回し、右手の先から肩、頭の後ろを滑らせて左手の先へとボールを移動させた。

 くるくる、くるくる。今度はボールは彼の左の指先で回っていた。くるくる、くるくる。

 何だっけ、これ。昔……小さな頃習った英語。

 round and round(くるくる……くるくる)

 私はベランダから走り出した。
「お母さん! ちょっと、久しぶりにそこでバスケしてくる」

 頭の中で、くるくる、くるくる……。
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