arch
体が勝手に~なんて言えるわけもなく、私は無難な答えを考えていた。ぐるぐる頭を回転させて。横にはくるくる……回るボール。
「槇野くん、バスケするんだなあって。何でだろう。そう思ったら嬉しくて」

槇野くんは反対の手で器用にボールの回転を早めた。そのまま、そっちの指先にボールを移動させた。

「わ、凄い」
思わず身を乗り出して、ボール越しに目が合う。槇野くんの表情からは少し、憂鬱な影が漂うのを感じた。

「宮原さんもバスケ、するんだ?」
「中学までしてたの」
「高校では?」
「しない」

聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声で「そっか」と言った。
そこにはボールが槇野くんの指先を滑る音だけが響いた。

「派手だね……」
 夕陽も赤くて、反射するようなシルバーブルー。くるくる……くるくる。

「うん、格好いいだろ?」
 影が漂う、そんな表情のまま彼はそう言う。それを疑問に思ったけれど、
「うん、格好いい」と答えた。気を遣ったわけじゃなくて、こんな派手なバスケットボールは初めて見たし、本当に格好いいと思ったからだ。
「ははっ」自嘲を含んだように彼は笑った。
「格好つけたくて、派手なの選んだんだよね」

槇野くんはボールを1度高く上げ、空中でパシッとキャッチした。

「なんてね」
 そう言って、ベンチから立ち上がるとボールをケースにしまい、鞄に入れてしまった。

「ま、槇野くん、明日! 明日ね。また明日!」

 来てね、絶対。そうは言えなかったけれど、そう気持ちを込めて。槇野くんはほんの少し、顔を緩めてくれた。

 それが「うん」ってことならいいなあって彼の小さくなっていく背中に思った。
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