arch
横から見えたもの
 槇野くんは、また器用にくるくる回したボールをポイッと私へ投げて来た。
「わっ」
 反射的に受け取ると、私もマネして回してみる。一度も回ることなく、ボールは地面を転がった。
「難しいよ」
「そう? どこが中心かわかれば案外簡単だよ」
 ふっ、と目元を緩ませて彼はベンチまで歩いて行った。私もすぐに見慣れた背中を追いかける。ボールはつるつるしたエナメル素材だけど、しっかりしたボール……えっとこれも競技用なのかな。

「このボール、7号なんだね。6号なのかと思ってた」
「ああ、そうか。女子は6号だもんね。慣れてないと持ちにくい?」
 槇野くんは私の手からボールを取るとベンチに腰掛けた。私もその横に座る。
「違うの、槇野くんが持ってたらもう少し小さく見えたから」
「ああ、俺……手デカイんだよね。7号片手で持てる」
「え、嘘!?」
「本当。片手で持てないとダンク出来ないっつって、練習した」
そう言うと片手でボールを持って振り子の様にゆらゆら振って見せた。

「本当だ。凄い。……って、え? ダンクって言った? まさか、 出来るの!?」
「……出来る」
「嘘!? 見たい! 見たいよ」
「……。またね」
 私の勢いに、槇野くんは苦笑いだ。

「うん、ごめん。何か……ごめん」
 一人で盛り上がってしまった。
「いや、そういうんじゃなくて、ほら……ここに女子座らせて、ダンクとか……格好つけてるみたいだろ」
 槇野が自虐的に笑った。そうだ、格好つけてるって昨日も言っていた。
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