arch
 私は見慣れた背中に向かって叫ぶように言った。
「私は、私で! 好きだからここにいるんだよ」
 槇野くんの背中が、ピタリと止まった。どんな顔をしているのか見えないのは残念だけど、涙が出てきそうできっと酷い顔をしているだろうから、振り向かないで欲しい。

 同情でも義務感でもなく、私は……
「明日! また明日ね、槇野くん!」
 槇野くんはそのまま振り向かず、軽く手を上げて歩きだした。

 また明日。絶対、絶対だからね。心の中で背中に強く願った。

 槇野くんが学校来ますように。やめませんように。学校も、バスケも。
 この気持ちが行き場を無くしませんように。

 くるりともう一度バスケットゴールへと向かう。
 ゴール下、手を伸ばしても伸ばしても届きそうにないくらい高い。槇野くんはあんな高いところまで届くんだ。信じられない思いでリングを見上げる。
使い込んだアクリル板のボードはくすんでいて夕陽を跳ね返す艶はなくなっていた。あっという間に沈んでいく太陽。さっきまで赤く、明るかったのに。

 私は、私が槇野くんに会いたいから、ここに来ている。槇野くんのためじゃない。自分勝手な思いの方が今の槇野くんには重荷にならないのじゃないかと思う。

 だから、明日も……私はここに来るつもりだ。
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