arch
 家に帰ると母親に
「随分と熱心ね」と言われた。
「うん、まあね」

 それはもう、夢中だからね。心の中で呟いた。
 自分でもどうしていいかわからないくらい彼に夢中だった。どうしていいかわからないからこそ……自分の感情に素直になろうと思う。

 『私は、私で! 好きだからここにいるんだよ』同情ではないと伝わったかな。もう少しいい言い回しが出来なかったかな、そう思っていた。一人反省会。
「ご飯よー」
 そう呼ぶ声がして、「はーい」と返事する。

 悩んでるっていうのに、ご飯だなんて……。全くお母さんは空気を読まないんだから。ぐーっと鳴ったお腹に「いや、ナイスタイミング」と一人言を言う。

「ねぇ、唯? ぼーっとするか、食べるかどちらかにしなさい」
「あ、は、はーい」
 いけない、頭の中が槇野くん一色だった。

 慌てて目の前のコロッケにかじりつく。
「美味しいねえ、このコロッケ」
「……メンチカツよ。悪かったわね、お肉少なくて」
 母親のじとっとした睨みに、ダイエット中だからー、なんて返して誤魔化した。
「これくらいが好き」というと母親には取り繕った事がバレバレだろうけれど
「調子いいんだから」と呆れたように笑った。
「父さんもっと肉々しいのが好きだな」と父親が母親の顔をひきつらせた。
「俺は、量あればいーし」中学生の弟は反抗期に片足をつっこみながらも食欲は旺盛だ。

 ふう、とこの目の前の現実にため息をついた。
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