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放課後の河川敷でのことは、誰にも言っていなかった。

 安っぽい冷やかしを受けたくなかったし、あの時間は単純に好きとか嫌いとかそんなんじゃない気がしていた。誰にも知られたくなかった。特別な時間と特別な感情を大切にしたかった。

 話しかけているクラスメイトに槇野くんが顔を上げる。女の子がはにかんだ笑顔を向けて、彼も何か一言二言(ふたこと)交わす。

 たったそれだけの事なのに、こころに心に靄がかかったようになる。狭いなあ、心が狭い。嫌になる。

 だから、河川敷のことを誰にも言いたくないのは、私の優越感からくる独占欲なのかもしれない。槇野くんはどう思っているのか知らないけれど、今のところ、誰にも話してはいないようだ。最も私のように敢えて話さないわけではなく、たまたま話してないだけかもしれないけど。そう思うとまた、心に薄い靄がかかってしまった。

 髪、少し伸びたなあ。襟足の髪を見てそう思った。後ろ手に差し出されたプリントを慌てて受け取ろうと手を伸ばす。首だけほんの少し後ろへ捻る。
「ん」
「あ、はい。ありがとう」

 きっと、槇野くんは急かしたりせず待ってくれるだろう。ああ、もうこれだけでどうしようもなく好きだと自覚してしまう。

 他のクラスメイトとは違うと……彼にも思って欲しいと願う私は、随分と欲張りになってしまった。

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