arch
「聞いてあげようか?」
 と言った梨花子と由紀恵に断りを入れて、私は胸にある決意を抱いていた。

 もう一歩、踏み込んでみようと思う。この気持ちにも、槇野くんにも。

 ──放課後
 グレーの車体に(とう)の形をプラスチックで再現したカゴのついた自転車を引っ張り出す。鞄をカゴに入れると、ペダルは心地よく回り出す。朝よりは急ぐ必要はないけれど、一世一代くらいの気持ちで漕ぐ。

 この日はベランダへ行かずに、Tシャツとハーフパンツ(比較的可愛く見えるもの)に着替え、玄関のシューズボックスの上の棚に入れられていたバスケットボールを取り出した。

 槇野くんはまだ河川敷には来ていなかった。今日も来るとは限らないけど、ここでしか会えないのだから、ここで待つしかないのだ。

 スリーポイントライン、胸より少し上あたりに両手で構えた。よく膝を使えって言われたっけな。息を止めて打つ。左右対称に開いた手首に、懐かしい感覚。

 槇野くんみたいにワンハンドでスリーポイントなんて無理だけど、久しぶりにしてはリングに届いて満足する。リングの上を2周半ほどまわると、外側に落ちた。ボールが地面にバウンドする音が響く。

 それを小走りで拾い上げ、数回ドリブルをついてレイアップでシュートを決めた。たったこれだけで息が上がる。運動不足だなあ。
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