arch
 私が絶句したのは、彼の言った意味がわからなかったからではなくて
すごすぎて言葉を失っただけだ。

「あ、ダンクするにはボールが片手で持てて、手首のここくらいまでリングから出るくらいまで跳ばなきゃなんだ」
 自分の手首のちょっと下辺りを指差して言う。私の顔を見て、わかってないと思ったのか
「両手ダンクは片手で持てなくてもいいけど、その分跳ばなきゃで……あれ?」
「その理論はわかるよ。でも、私はそんなの全然関係ないとこでバスケしてたから」

 私の言葉にちょっとしゅんとしてしまったので
「見たいよ」と笑って言った。
「うん。えっと、助走いるからトラベリングとかいうのやめてね」
 そう言って、ゴールから離れると片手でボールを持って走った。

 さっきも思った。跳ぶというより、飛ぶと言いたくなるくらい、ふわりと上がる。一瞬止まった、“浮く”に近い跳躍。そこからぐんっと空を切った。ガンッとリングに押し込む様にボールを入れる。入れるって、まさにそんな感じ。一瞬リングにぶら下がるとボールが地面に落ちる。彼も地面に降り立った。スローモーションのように見えた動きに感動すら覚える。

  しばらく言葉が出てこない。私はそんななのに、槇野くんは涼しい顔でボールを拾った。

 私の目測が正しければ、フリースローあたりから跳んだと思う。やっと出てきた言葉は「すご……」だけだった。

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