arch
 ようやく息を整えて、槇野くんを見上げた。

「笑いすぎ」そう言った槇野くんも笑っていて、私の笑いっぷりに「つられた」って言ってたけど、その笑顔にこれ以上は好きにならないように、私は少し……ブレーキをかけた。

 じゃあ、尚更、どうして……
 私が今日持ってきた決意は“彼女がいるか”を聞くことだったのだけれど、違う事を訊ねる決意にすり替えた。

「どうして、バスケから離れたの?」
 ずっと疑問に思っていたけど、聞いてはいけないと口をつぐんでいたこと。こんなに軽やかに跳べるのに、何でだろう。そして、毎日ここで一人で練習するくらいバスケが好きなくせに。

「離れてない」
 彼の口調は断言するものだった。それは表情からも読み取れる。

「離れられなかったんだ」
 吐き出すように、そう言った。さっきまで、涙が出ちゃうほど笑っていたのに、今は張りつめた空気が流れていた。

空は青をほとんど残さず、茜色より黒に近い濃紺に埋め尽くされていた。
彼が話しづらくても聞きたいと思った。私にはその権利があるように思えた。だからこれ以上彼が話さなくて済むように、以前のように『ごめん』と謝ることはしなかった。代わりに
「聞かせて」と、そう言った。もう日は落ちかけていたけれど。



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