arch
 家に帰ると、覚悟はしていたけれど
「遅い」で始まり「誰」と質問責め。
 母親は半分怒って、半分わくわくしている。

「ちょっとバスケに熱くなっちゃっただけ」
 と、私も半分だけ本当の事を言った。さっさと食事を終えると部屋へと逃げる。

すごかった。やっぱり、思い出してもすごかった。高校生ってすごいなあ……。それとも槇野くんがすごいのか。あんなの見たら誰でも好きになっちゃうよ。複雑な気持ち。さすがに、別世界レベルの槇野くんに嫉妬心なんて湧かないけど、羨む気持ちは……思い出してしまった。夢中になって楽しくて仕方がなかった頃から、もうバスケはいいやって思う今の心境までなぞるように振り返った。

 あんな風に、跳べたらな。綺麗なシュートフォーム、浮き上がるような跳躍力。

 そんな人が、なぜ?強豪高校へ行くという噂は本当だったかもしれない。『離れられなかったんだ』吐き出すようにそう言った槇野くんの表情が頭から離れなかった。

 あんなに笑った日だっていうのに、今は笑えなくて……私に何が出来るのだろうか。もちろん、格好悪い彼だって私は見せて欲しいと思うのだけれど。

 明日、槇野くんが学校に来ますように。

 いつものようにそう思って、宿題をしてない事を思い出し、こんな時でも宿題かぁと机に向かった。リアルに追われている方が考えずには済む。筆箱のファスナーすら滑らかではなく、憂鬱に沈んだ。


< 49 / 52 >

この作品をシェア

pagetop