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「聞いてよ、唯ちゃん」
朝一番、いつもならば至福のお背中拝見タイムなのに、今日はそこに隔てる人がいた。

 そこに槇野くんの背中があって登校している事がわかる。ちょっと憂鬱な気持ちを引きずっていたのも事実で、ちょうどいいかなとも思う。このムードメーカー的な山地くんの存在は。ただ、数回喋った事があるかないか、にも関わらず、『唯ちゃん』と、いいましたか、この人は。えーっと、由紀恵……前に何て呼んでたかな?記憶を辿る。そうだ、そうだ。
「何、《《りっくん》》」私は軽い指摘のつもりで敢えてそう呼んだ。
なのに山地くんはすんなり受け入れて……こういうとこが人なつっこい!……普通に話し始めた。
「この人さあ、放課後遊ぼーって誘っても1回も来てくんないの」
 と、槇野くんの脇腹を小突く。
「あだ」
 全く聞いてなかったのだろう、油断していた槇野くんから変な声が漏れて吹き出した。

「いや、だから用事って。誘ってくれるのはありがたいけど」
「聞いた、今の。用事って何かも言わない。断りの定型文みたいな。用事と法事はだいたい嘘って決まってる!」
「あはは~!りっくんおかしい~」
 由紀恵がケラケラと笑う。山地くんはちょっと赤くなって
「んじゃ、由紀ちゃんは?」と由紀恵をチラ見しながら訊く。
わあ!自然に誘ったよ、この人!

「部活だってば」
「あー、だよね。じゃあこんなかで部活じゃないの俺と槇野と唯ちゃんだけじゃん」
「だけって過半数だっつの」
 梨花子が冷静に突っ込みを入れた。


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