君の才能ごと、独り占め
すると榊くんは目を細める。

「そうやって笑うの、俺だけにして」

「え」

「無理ならせめて、俺の前でいちばん見せて」

甘いのに、どこか独占欲のにじむ言い方だった。

私は頬を熱くしながら、小さく頷く。

次の瞬間、彼の腕が私をそっと包み込んだ。

強くない。苦しくない。

でも、絶対に落とさないみたいな抱きしめ方だった。

制服越しに伝わる体温が、鼓動が、現実だと教えてくる。

「星音」

名前を呼ばれて、びくりと肩が揺れた。

「今、名前」

「嫌だった」

「嫌じゃない……」

「ならこれからそう呼ぶ」

耳元に落ちる低い声だけで、体の奥まで熱くなる。

「星音」

もう一度呼ばれる。

そのたびに、自分が特別になっていくみたいだった。
< 32 / 194 >

この作品をシェア

pagetop