君の才能ごと、独り占め
「じゃあ、お言葉に甘えてもいい?」

榊くんは少しだけ顎を引いた。

それが肯定だった。

食堂までの廊下を並んで歩く。周りの視線が少し集まっているのがわかる。転校初日に人気者と並んで歩いていれば当然かもしれない。

だけど不思議と居心地は悪くなかった。

彼が余計なことを言わないからだ。

私の経歴に興味本位で踏み込まず、かといって無視するわけでもない。ただ必要なことだけを淡々と教えてくれる。

「階段を降りて右」

「購買は隣」

「昼休み後半は売り切れる」

「あ、ありがとう。助かる」

「別に」

やっぱり素っ気ない。

けれどその声には、朝より少しだけやわらかさがあった。
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