君の才能ごと、独り占め
「あの講堂の子だよね」

「めっちゃ綺麗だった」

「ピアノの音、やばくなかった?」

「写真撮りたい」

「二年三組ってどこ?」

一気に注目が集まる感覚。
前なら息苦しさに変わっていたかもしれない。

けれど今は、そのたびに思い出す。

終わったら最初に俺のところに来い。

私は人波を縫うようにして、講堂横の渡り廊下へ向かった。
約束していた場所だ。

そして角を曲がった先で、恒一くんは本当に待っていた。

壁にもたれ、腕を組んで、静かに人の流れを眺めている。
その姿を見つけた瞬間、胸がいっぱいになった。

「恒一くん!」

名前を呼ぶと、彼の視線がすぐにこちらへ向く。
その目がわずかにやわらいだ。

私は駆け寄って、彼の前で立ち止まった。

「……来た」

「知ってる」

「最初に来たよ」

「うん。えらい」

その言い方が少しだけ甘くて、思わず笑ってしまう。

でも次の瞬間、恒一くんの視線が周りを一度なぞった。
< 75 / 194 >

この作品をシェア

pagetop