君の才能ごと、独り占め
通りすがりの生徒たちが、こちらを気にしているのがわかる。
中には私に声をかけようとして、恒一くんの存在に気づいてやめる子もいた。

彼はそれを見て、静かに言った。

「こっち」

手首を取られる。
強くはない。
でも迷いのない動きだった。

連れていかれたのは、資料室の裏にある小さな中庭だった。
文化祭中でもほとんど人の来ない場所で、少しだけひんやりした空気が流れている。

「恒一くん?」

呼ぶと、彼は数歩先で立ち止まって振り返った。

その顔はいつも通り落ち着いているのに、目だけが少し違った。
熱を持っている。

「すごかった」

低く、はっきりした声。

「ほんとに綺麗だった」

その一言で、ようやく実感が追いついてくる。
私はちゃんと弾けたんだ。
そして彼に、届いたんだ。

「……ありがとう」

「客席で見てて、たぶん今までで一番心臓悪かった」

思わず目を丸くする。

「なんで?」

「みんな見てたから」

その答えに、胸がきゅっと甘く縮む。

「星音が舞台に出た瞬間、空気変わった」

彼は私に近づく。
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