君の才能ごと、独り占め
午後の文化祭はさらに忙しかった。
講堂の演奏で名前が広まったのか、クラスの喫茶には予想以上のお客さんが押し寄せる。

私は接客をしながら、ときどき視線を感じた。
廊下からこちらを見ている他クラスの男子。
写真を撮りたそうにスマホを構える女子。
話しかけるきっかけを探しているような先輩たち。

それに気づくたび、なぜか先に恒一くんの顔が浮かんだ。

たぶん今これ見たら、絶対また嫉妬する。

そう思うのに、少しうれしい自分がいる。
私にだけ見せる、あの静かな独占欲が好きだから。

夕方、一般公開の終了時間が近づくころ。
片づけを始めた教室に、見慣れない男子がひとり入ってきた。

三年生の名札。
すらっとした背の高い先輩だった。

「あの、橘さんいる?」

その一言で、教室の空気が少し変わる。

「私ですけど」

答えると、先輩は少し照れたように笑った。

「さっき講堂で演奏聴いた。すごく良かった」

「ありがとうございます」

「もしよかったら、文化祭終わったあと少し話せない?」

一瞬、教室が静かになる。

これはたぶん、そういう誘いだ。
空気でわかる。

私はどう返そうか迷う。
きっぱり断らなきゃ。
そう思った瞬間だった。
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