過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
だが、次の瞬間、廉は無言のまま結衣の手首を強く掴むと、拒絶する隙も与えず、そのまま誰もいない非常階段の踊り場へと強引に引きずり込んだ。
「痛っ・・・・廉くん、離して・・・・!」
重い鉄のドアがバタンと閉まり、静寂が二人を包み込む。
廉は結衣の手首を掴んだまま、彼女の身体を非常階段の壁へと力任せに押し付けた。
逃げ場を塞ぐように両腕を突き、至近距離で見下ろしてくる廉の瞳には、今まで見せたこともないほど深く、暗く激しい執着の火が燃え上がっていた。
「・・・・・距離を置く? お互いのため?」
低く低く掠れた声が、壁に反射して結衣の鼓膜を震わせる。
「ふざけないでください。あんた、またそうやって自分を納得させて俺から逃げようとしてるだろ。」
「逃げてなんか・・・・! 私は本当に、廉くんの立場や将来を心配して────」
「俺の立場なんてどうでもいい!!」
狭い踊り場に廉の叫びが響き渡り、結衣はビクッと身体を強張らせた。
廉は荒い息を吐きながら、結衣の両肩を折れそうなほど強く抱きかかえ、額を結衣の額へと強く押し当てた。