過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
結衣は離れようと彼の胸を軽く押したが、酔いのせいか全く力が入らない。
「離してよ・・・。職場の人に見られたらどうするの・・・・。」
「誰もいませんよ、もう。それに、お酒の力借りないと俺の手も振り払えないくせに。」
耳元で落とされた低く甘い声。
結衣の防壁は、お酒と彼の温度によって少しずつ削られていこうとしていた。
「・・・駅まで送ります。タクシー拾いましょうか?」
「ううん、歩ける。風にあたりたい・・・。」
結衣の意地っぱりに付き合うように、廉は彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩き出した。
だが、結衣の手首は廉の大きな手にしっかりと握られたままだ。