過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
街灯がぽつりぽつりと照らす閑静な通り。
ふと、結衣の頭の中に、苦い記憶が蘇ってきた。
大学時代、当時の彼氏と飲み会の帰りに喧嘩をした時のこと。
「お前って本当に重いし可愛くない」
「もっと物分かりの良い大人になれよ」
と言われ、夜道に置き去りにされた記憶。
あの時の冷たさと寂しさが、酔いとともに急に胸を締め付けた。
(・・・・そうだ。私、恋愛になるとダメなんだ。また同じ思いをするだけ・・・・。)
ギュッと胸が苦しくなり、結衣は繋がれた手を振り払おうと身をよじった。
「・・・瀬戸くん、もういいから。手、離して。」
「嫌です。転びますよ。」
「離してってば! 私・・・年上だし、瀬戸くんのそういう気まぐれに付き合えるほど大人じゃないの!」
思わず強い声が出てしまった。
立ち止まった結衣は、俯いたまま拳を握りしめる。
「瀬戸くんは、新しくて珍しいから私に執着してるだけだよ。私なんて・・・・・付き合ったってどうせ重いって思われるし、いつか飽きられて捨てられるの。だから、もうからかうのはやめて・・・・・!」