過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
キュッと、服の裾を強く引っ張られる感触。
「・・・・・・・え?」
振り返ると、ベッドの中から廉が結衣のブラウスの裾をギュッと握りしめていた。
上目遣いで結衣を見つめるその瞳は微かにうるんでいて、いつもの''頼もしい後輩''の顔はどこにもない。
「・・・・・結衣ちゃん、帰らないで。」
低く掠れた声で落とされたのは、社内でも二人きりの時でも聞いたことのない、甘く切ないおねだり。
いつもは''結衣先輩''か、意地悪そうに微笑みながら呼ぶ''結衣さん''なのに、熱のせいか、素の年下男子に戻って''結衣ちゃん''と呼んできたのだ。
「廉、くん・・・・・?」
「・・・一人にしないでください。今夜は側にいてほしい・・・・・。ダメですか?」
ギュッと裾を握る指先に力がこもる。
照れくさそうに、けれど絶対に放したくないと言わんばかりの強い拒絶。