過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
結衣が密かにホッとしたのも束の間。


廉が書類を結衣のデスクに置く際、すれ違いざまに結衣の手の甲へ、彼の長い指先がさっと滑り込んできた。​

親指で、結衣の肌を撫でるような優しく怪しい触れ合い。


​「っ・・・・!」​


驚いて顔を上げると、廉はフロアの誰にも見えない絶妙な角度で、結衣だけに唇を小さく動かしてみせた。​


(あ ・ と ・ で)​


声には出さない秘密の合図。

そのまま彼は
「よろしくお願いします!」
と爽やかに一礼し、自分のデスクへと戻っていく。

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