過去の傷も全部、君の熱で上書きして。

朝、会社の一駅手前で待ち合わせた時。

「誰かに見られたら・・・・」と焦る結衣ちゃんの細い指を強引に絡め、コートのポケットの中に放り込んだ瞬間。

ポケットの中で伝わってくる彼女の高い体温と微かな震えに、俺の心臓は耳元でうるさいほど跳ね上がっていた。

『会社に着いたら嫌でも「先輩と後輩」のフリをしなきゃいけないんですから』
なんてクールぶってみせたけれど、本当はそのまま会社をズル休みしてどこかへ連れ去りたいくらいだったのだ。​

オフィスに入ってからの''会社での秘密の合図''もそうだ。

デスクに書類を置くフリをして結衣ちゃんの手の甲を撫でて、
(あ ・ と ・ で)
と唇を動かした時。

書類で顔を覆ってカッと顔を赤くする結衣ちゃんが可愛すぎて、自分のデスクに戻った後、ニヤける口元を隠すために必死でコーヒーを飲んだ。​

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