サーカス&バンドの年の差恋愛
朝の光が窓から柔らかく差し込む中、愛斗は正子の手作りの朝ごはんをゆっくりと味わった。
温かい味噌汁の香り、焼きたての魚、そして笑顔で向かいに座る正子——この時間が、愛斗にとって何よりも大切なひとときに感じられた。
ごちそうさまでした。美味しかったです」
「よかった~✨ じゃあ、準備して出かけよう」
二人は荷物を整え、家を出た。空気は澄んでいて、これから始まる旅の予感が胸を弾ませた。
空港に着くと、既に高、ありさ、勇一、森丘ヒロキ、内堀舞台監督、吉田照明監督の姿が見えた。みんな笑顔で手を振ってくれる。
「おはよう! 愛斗くん、正子さん」とありさが駆け寄ってくる。
「おはよう。今日からよろしくね」愛斗は深くお辞儀をし、一人ひとりに丁寧に挨拶を交わしていく。
やがて飛行機が離陸し、窓の外には青い空と白い雲が広がっていった。北海道へ向かう機内、みんなで楽しそうに話す声が響き、わくわくとした気持ちがどんどん大きくなっていく。
千歳空港に到着すると、まずはみんなでラーメンを食べることにした。北海道らしい濃厚なスープのラーメンに、舌鼓を打ちながら笑い合う。
「美味しい! 北海道のラーメン、最高だね」と勇一が目を細める。
お腹も満たされたところで、タクシーに乗り込みホテルへ。荷物を部屋に置いて、まず向かったのは白い恋人ミュージアム。真っ白で可愛らしい建物に、みんなのテンションが一気に上がる。
工房ではラング・ド・シャ作りに挑戦。生地を伸ばし、焼き色を確かめ、チョコレートを絞っていく。愛斗と正子は顔を寄せ合い、ハート型のラング・ド・シャにチョコペンで「正子 ❤️ 愛斗」と書いた。
「わあ~、ラブラブだなあ💕」とありさがからかい、高も「本当だ、いい感じじゃない」とにっこり。
正子は顔を赤らめながらも嬉しそうにそっと愛斗の腕に触れた。
その後、広い敷地の中にある彫刻の見える公園へと足を運び、記念撮影をした。
カメラの前でポーズを決め、「はい、チーズ!」——その一枚が、かけがえのない思い出になった。
日が沈むまで北海道の景色と空気を存分に満喫し、夜にはホテルでジンギスカンを囲んだ。
おいしいお肉と野菜を囲み、話は尽きることがない。楽しい時間はあっという間に過ぎ、勇一、ヒロキ、内堀さん、吉田さんはそれぞれ自分たちの部屋へと戻っていった。
時計は21時を指していた。
正子が少し照れくさそうにつぶやく。
「まだ少し飲み足りないな……」
「それなら、近くに『花気分』っていうカラオケハウスがあるんです。昔からの知り合いのオーナーさんがいるので、そちらで飲み直しませんか? ご挨拶もしたいし」
「いいわね、行ってみたい!」
三人はコートを羽織り、夜道を歩いてお店へと向かった。
木の温もりが感じられる扉を開けると、優しそうな女性が笑顔で出迎えてくれた。
「いらっしゃい。愛斗くん、来てくれたのね!」
「川島さん、こんばんは。お久しぶりです。本日はよろしくお願いします」愛斗は丁寧に頭を下げる。「こちらは叶正子さん、ありさちゃん、そして高さんです」
川島いくこさんに三人を紹介すると、正子が隣からそっと愛斗に囁いた。
「ねえねえ、愛斗くん。何の『先生』って呼んでたの?」
愛斗は少し照れながら答える。「実は、川島さんは作詞家協会の会長を務めていらっしゃる方なんです。だから先生と呼んでいて」
「えっ! そうなの!?」
「すごい方だったんですね!」
「会長さんだなんて、驚いたなあ」
三人が目を丸くして驚く様子を見て、川島さんは楽しそうに笑ってくれた。
「さあさあ、飲んで歌って、楽しんでいってくださいね」
お酒が運ばれてきて、まずは正子が立ち上がる。「じゃあ、私から一曲」
澄んだ声で『ミスターサマータイム』を歌い続けると、続いて『アメリカン・フィーリング』をありさと高も加わって歌い上げる。美しいハーモニーが店内に響き渡り、川島さんも目を細めて聴いてくれていた。
最後に愛斗がマイクを持つ。「それでは僕は、『ホームタウン急行』を歌います」
心を込めて歌い終わると、温かい拍手が包み込んだ。楽しい時間はあっという間に過ぎ、名残り惜しい気持ちを胸に、川島さんにお礼を言ってお店を後にした。
外には澄んだ夜空が広がっている。三人は肩を並べてホテルへと歩きながら、今日一日の出来事をそれぞれに思い返していた。
< 18 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop