先生はキケンな許嫁。
帰宅してすぐ、私は棚から救急箱を取り出した。
「ねぇ…とりあえず絆創膏…消毒もしないと」
「このくらい平気。かすり傷だから」
ね?っと微笑みながら、テーブルに置いてあるティッシュでちょんちょんっと口の横を拭いている先生。
「怖かったよね、ごめんね」
「………っん」
さっきの恐怖心と、先生が殴られてしまった罪悪感と……ぐちゃぐちゃになった感情が湧き上がり再び目から涙が溢れ出した。
「…てかなんで……場所わかったの?」
「美織ちゃんの携帯にGPSついてるから」
「……え!?なにそれ…」
「お父さんからの命令だからね、それに美織ちゃんまだ未成年だからって」
「……もう……なによそれ…」
泣き疲れた私は少し頭がぼーっとした。
なんか……すっごいつかれた。
「ごめんね、美織ちゃん……俺のせいで」
「…………触らないでって言ってんでしょ」
「………」
いきなり私を抱きしめた先生はその場で黙り込む。
私は先生の胸の中で少し安心感を感じた。
それと同時に、さっきのエントランスで見た女性とのキスを思い出して、ハッと我に振り返る。
「ねぇ、さっきの思い出した……やっぱ無理!
離してよ……」
抵抗するわたしの力は先生に勝てるはずがなく、さらにぎゅっと強く抱きしめられた。
「俺、もうあんなことしないから」
「……むり!信じられるわけないじゃない…」
「もう、フラフラするのやめるから」
「…………」
「信じて欲しい、美織ちゃん」
そう言って先生は、抱きしめた私の体をゆっくりと離し、まっすぐに私の目をみつめている。
それはどこか……寂しそうで。でも真剣で。
うるっとした瞳で、吸い込まれそうになった。