先生はキケンな許嫁。
「俺は美織ちゃんの将来の旦那さんだよ♪」
「……何言ってんの」
「だから、美織ちゃんの許嫁」
「……は?」
無理。ありえない。絶対ない。
「勝手に人の家にあがりこんで、そんなこと言われても信じられるわけないでしょ!」
「じゃあなんで許嫁のこと知ってると思う?他に知ってる人いる?」
「…………」
確かにチャラ男の言う通り、許嫁のことを知っているのは奈々だけだ。
黙り込んでいる私のことをみてニヤッといたずらな顔で笑っているチャラ男。
「ちなみに鍵は美織ちゃんのお父さんにもらったし、顔認証も登録済みだから、よろしくね美織ちゃん♪」
「え、じゃあなに…私の家にいつでも入れるってこと…?」
「入れるって言うか、俺ここに住むことになったから♪」
「……無理っ。お父さんに電話する!スマホ返してよ!」
一瞬気の緩んだチャラ男の手からスマホを取り返した。私は電話帳にある『お父さん』を急いで探して、ボタンを連打した。
−プルルップルルッ
「おお、なんだ美織か。」
「お父さん!私の家に不法侵入してるやつがいるんだけど!!」
「あぁ、やっと到着したか。
その方は◯商事の黒木社長の息子さんでね。
美織の許嫁だ。今日から一緒に暮らすんだぞ。
じゃあ、お父さんもう仕事に戻るから。」
「…え!ちょっとまって!お父さ……」
−−−プープープーッ
「信じてくれた?」
なんでよりによってこいつなの。
私の中の許嫁はもっと誠実な人を思い浮かべていたのに。
わたしは唇を噛み締めながら、苛立つ感情を抑えた。
もしもお父さんに嫌だとか無理だとか言ったところで、この状況が変わるわけない。
そう思った私は何も反抗できないし、今のこの状況を変えることもできない……。